たびれこ

- Rec All & Recall -

宙組:白夜の誓い-グスタフ三世、誇り高き王の戦い- / PHOENIX 宝塚!! -蘇る愛- いまさら感想

今更ではありますが,贔屓の退団ということで一番思い出深かった,宙組公演・白夜の誓いの感想まとめです.


f:id:ciel0:20150918011410j:plain

宙組公演 『白夜の誓い —グスタフIII世、誇り高き王の戦い—』『PHOENIX 宝塚!! —蘇る愛—』 | 宝塚歌劇公式ホームページ




白夜の誓い -グスタフ三世、誇り高き王の戦い-

東宝版しか見てないのですが,大劇場公演から演出が大分変更になったようです.
完全な暗転はほぼなく,役者さんが誰かしら舞台に出ているようなシーンが多かったように感じます.
1週間足らずの短期間で芝居を徹底的に叩き直してきたらしく,東宝初日から大楽に掛けての完成度の高まりを非常に感じた作品でした.
初日とか,かなめさんですら台詞間違えてましたもんね(聖堂シーンでのソフィア→イザベルの言い間違い).


作品全体は,身も蓋もない言い方をしてしまうと,スウェーデン版・ベルサイユのばら―オスカル編―という感じ.
2014年ベルサイユのばら―オスカル編―を髣髴とさせる,「王である前に,軍人である前に,私はひとりの人間だ!」とか,最期の最期の「スウェーデン王国に,栄光あれ…!」とか,そういう台詞が結構耳に残ります.



全体通して思うことが残る演出ではありましたが,スヴェンスクスンドの海戦の群舞は圧巻でした.
他のシーンの煮え切らなさをここで全部昇華しますっていうくらいすごい.
戦局の変化と同時に上手側の兵士を真っ先に倒れさせ,グスタフを下手に追い詰めることでロシア艦隊の強さを視覚的に表しているんですが,下手端でグスタフが叫ぶ「怯むな!」から一転してスウェーデンが優位になるんですね.
最終的にグスタフを銀橋中央に移動させることで「強敵に打ち勝った」ということを強く印象付けており,個人的には非常に好感の持てる演出でした.


暗転の多さと絶妙なタイミングで入ってくるピコピコした音楽*1が気になって,ややもすると海戦の群舞と閉幕直前のかなめ様の儚げな横顔が目的になってしまいがちですが,元の脚本の穴が多い分各シーンにおける役者さんの演技が光る演目だなぁと思いました.

緒月さん演じるヤコブ・アンカーストレムは,幼年期から青年期に至るまでのグスタフとの絶妙なすれ違いを短い時間で見事に体現してらっしゃいました.
中でも印象に残ったのが,凰稀さん演じるグスタフとの決別になるデュエットとラストシーン.
同じスウェーデン王国を思いながらも考えの違いから対立する光と影のような二人の公人が,二人の友人に戻る瞬間は圧巻でした.

7代目トップスター朝夏まなとさん演じるリリホルンは,家族と忠誠心で揺れる苦悩を好演.
大楽が近付くにつれ,近衛隊長として参加する誉れ高い行進,婚約者ラウラとのやりとり,クランツ,モルコフ,グスタフに対する懊悩のそれぞれが色濃くなり,生真面目を絵で描いたような性格を浮き彫りにしていました.

そして,ぞっとするほど綺麗な高笑いに続く「まさか嘗ての属国,スウェーデンに嫁する日が来ようとは,夢にも思いませんでしたわ」で観客を一気に引き込み,次第に募るグスタフへの思慕を演じきった実咲凛音のソフィア.
専科もかくやという威圧感を見せつけた純矢ちとせ扮するエカテリーナ,グスタフとソフィアを祝福する伶美うららのイザベル,あの時代を生きる女性を素直に表現した瀬音リサのラウラと,脇を固める女性陣の演技も秀逸で印象深かったです.


それだけに,脚本と演出のアラだけが残念な作品でした.
はじめからあの脚本であれば,もっと良い演出であれば,凰稀かなめ率いる宙組の傑作に数えられたのではないでしょうか.

PHOENIX 宝塚!! -蘇る愛-

対するレビューは芝居での微妙な不完全燃焼感を吹き飛ばす爽快な演出でした.
二本物はレビューで気分を盛り上げて帰れるから本当に有難い.
花・雪・星・宙と歴史を重ねてきた鳳凰・凰稀かなめを全面に押し出しつつも,次世代へのバトンタッチを綺麗に描く素敵な演出.
藤井先生本当に有難うございます.


階段中央のかなめ様のソロに始まり,「FLYS UP PHOENIX!」の掛け声で一気に場面が展開します.
軽快なショーと小芝居,サラマンダーの妖艶なダンスに鳥たちのレビュー,フェニックスの芝居と,陰陽が小気味良く切り替わる素敵な演出でした.


中詰前で入ってくる七海ひろき率いるアザラシ5(仮称)は,「僕に釣られてみる?」とばかりに釣り針をすごい勢いで投げてきます.
1階席で観劇した時に見事に被弾し,二度見したせいで二回被弾しました.重症です.
もう,かいちゃんとか呼べない…七海ひろき様ほんと怖い.


不死鳥のシーンは,何度見ても奈落に落ちきる瞬間まで演技を続けるかなめ様の指先に視線が釘付けになります.
その昔何かのインタビューで「指先まで神経が行き届いていない」ということをどなたかに指摘された,というのを拝見した覚えがあるのですが,あの演技はそれに対するかなめさんの答えなんじゃないかと勝手に思っています.
その直後,照明が落とされた空間に落ちてくるひとひらの赤羽根と,お腹に響くような低音のコントラストが本当に秀逸でした.


また,二つのデュエットダンスに続くかなめさんのソロナンバーは,歌詞はもちろんのこと,大階段の演出まで凝っていて,ファンなら涙なくしては見れない仕様になっていました.

薫る花で生まれたわたし
無垢な雪に 降り注がれて
流れ星に 強さはぐくまれ
果てしない 宙へ 翼ひろげた


本当に,藤井先生有難うございますとしか言えないです.
宙組子と藤井先生の愛あふれる,素敵なレビューでした.

伝説の宝鳥:刑事キタロールアドリブまとめ

見に行った範囲でまとめます.
東宝初日1/2は,このシーンがアドリブと気付かないまま終わってしまいました….

1/14:ソワレ

カナメール,キタロールともに細長いネクタイ.

間奏に入った途端カナメールから繰り出されたのは「変なおじさん」.
負けじと踊るキタロールに,カナメールが「ヘタクソ!」って叫んではけていきました.

1/31:ソワレ

カナメール,キタロールともに短いネクタイで登場.

ホイッスルを出したキタロールに,ポケットからホイッスルを出してドヤるカナメール.
後は二人でぴょんぴょん跳ねてました.かわいい.

2/1:ソワレ

カナメール,キタロールともに細長いネクタイで登場.

間奏中のやりとりは,

(緒月)「結ぶ?」
(凰稀)「はなしてよぉ!」
(緒月)「つめたぁい!」

でした.

伝説の宝鳥最後のシーンで,マドモワゼルフェニックスがキタロールの長いネクタイをリードのように引いて暗転.
芸細で楽しかった!!

2/15:大楽

カナメール,キタロールとも名前入りの細長いネクタイで登場.

間奏中のやりとりは,

(緒月)「運命の黄色い糸だね」
(ネクタイの端を結びながら)
(凰稀)「ちぇええい!」(結ばれたネクタイを断ち切ってはける)
(緒月)「なんでそういうことするのぉ!」

でした.

マドモワゼルフェニックスの銀橋では仲良く手をつないで下手まで.
キタロールがマドモワゼルフェニックスの腰に抱きついて暗転.
盛り上がりすぎてて暗転前の台詞がうまく聞き取れませんでした(笑).

この大楽の日に初めて,マドモワゼルフェニックス左足のガーターリング装飾に気付きました
スリットから覗くおみあしにばっかり気を取られて全然気付かなかった.

千秋楽当日 劇場入り(2/15:東京宝塚劇場)

これが最後,ということで初めて入り待ちをしました.
劇場前に置かれた真紅の薔薇入りの鳳凰の氷柱に度肝を抜かれていたら,
純白のフェラーリがすごいエンジン音を立てて目の前を通過していって本当に訳が分からなかったです.

かなめ様素敵!

ナンバープレートも「6」なんですよ「6」.
宙組6代目トップスター様流石です!!


凰稀かなめラストデイ・ライブビューイングまとめ

白夜の誓い-グスタフ三世、誇り高き王の戦い-

感極まりすぎて微妙なメモしか残ってないので箇条書きで.

  • みりおんの演技がすんばらしくて,東宝初日と比べてもソフィアの心情が細やかに感じられました.
  • すれ違うこともあるけれど,最後には巡りあう夫婦!!素敵!!!
  • 緒月さんの立ち回り後の吐息を拾いまくるマイクに感動.グッジョブ!マイク!!(何様)
  • 即位したシーンでモルコフさんの横槍が入る直前,かなめ様「諸君!」って言い掛けてたんですね.あんなにはっきりと演技されてたなんて….
  • リリホルンの置手紙のシーンで,カメラが被写体を見失うというまさかの事態が発生
  • 「カメラさんマジしっかりして!!」って内心つっこんでしまった.
  • 祝賀会参加を取りやめるよう進言する場面,グスタフに断られた後にリリホルンの頬を伝う一筋の涙が美しすぎました.まぁ様…!!
  • かなめ様の最後の表情がいつもと全然違って,ああ今日が最後なんだって,今更のように現実を叩きつけられました.

PHOENIX 宝塚!! -蘇る愛-

伝説の宝鳥アドリブは上に書いてしまったのですが,中詰の凰稀,緒月,朝夏(てるきたまぁトリオ)の

(緒月)「凰稀ィ…!」
(朝夏)「かなめェ…!」
(凰稀)「センキュゥ…!!」

は素敵すぎて腰砕けるかと思いました.
と!い!!き!!!

退団のご挨拶

同期生からのお花が逆向きで,ちっちゃい声で「逆,逆」って繰り返すかなめ様がかわいらしかった.
マイクが全部音拾うからライブビューイング会場で笑いが起きてた.

当日はひどく号泣していて内容を覚えることまで気が回らなかったのですが,Twitterにあげてらっしゃる方のものを引用させて戴くと,以下のご挨拶だったようです.

ついに... 夢の世界から覚める事になりました。
沢山の人物の人生を生きてきました。
怒らせ、泣かせ、笑わせてくれた たくさんの役たち。
私のことを温かく、優しく、厳しく、見守ってくださった皆様、心から愛しています。
そしてこの舞台で共に戦った、愛する宙組の仲間たち。
みんながこれからもずっと皆様に愛される組であり続けるように祈っております。
”宙組6代目 凰稀かなめ” 本日をもって宝塚を卒業致します。

https://twitter.com/annana0820/status/566897246193451009





おわりに

2011年に「クラシコ・イタリアーノ / NICE GUY!!」を見てから,ひそかにずっと追いかけていた凰稀かなめ様.
「緒方恵美さんに声質が近い」とかいう何とも自分らしい理由で好きになったのですが,凰稀さんの心がこもったお芝居が本当に大好きでした.

宝塚を退団された後の舞台にも馳せ参じたいと思わずにはいられません.
本当に素敵な世界を有難うございました.


関連記事




にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ 

*1:割と真面目な話として,vsニルスの愉快な仲間たちとの戦闘シーンの玩具みたいな楽曲だけは半年経ったいまでも納得がいかないです.